心臓病の愛犬と「楽しく」暮らすため、獣医師が情報を発信します! 僧帽弁閉鎖不全症、拡張型心筋症など良くある病気の説明から、 飼い主として出来る事まで幅広くお伝えします。
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Author:心臓の獣医師
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前回より続き
さて、 ここからは公式見解ではありません。 つまり、どの獣医さんに聞いても「その通りだ」と言うとは限らないレベルのお話しです。 そういうつもりでお聞き下さい。 まず、歯磨きを個人的には強くオススメします。 僧帽弁閉鎖不全症や心筋症の原因であると証明はされていませんが、 細菌が歯の付け根から侵入して心臓まで到達する事があるのは事実なようです。 特に、心臓病を発症するような年齢になっていると、 心臓に負けず劣らず歯もとんでもない状態になっている子を沢山見ます。 もし何かやれる事を!とおっしゃられるのであれば、 僕はまず歯磨きからオススメしています。 さて、細かいテクニックを先に話してしまいましたが、 実はもっと大切な考え方(だと伊藤が感じているもの)があります。 「心臓病の予防法は?」というテーマでお話しをしていますが、 本来、予防というのは「○○病はこうで、△△病はこう」というものではありません。 健康的な生活を送る事 これが、心臓病だけでなく全ての病気に対する予防になるはずです。 ここで言っている健康的な生活というのは、 人ならば「衣・食・住」や、精神面が関わってくるものだと思います。 これらをより良くしていくという事です。 まあ、犬には「衣」はあまり関係ないので、 食・住・精神面 が大事になります。 食べるものと、住む環境、心の問題ですね。 これらは足し算と言うより、掛け算で結果が出ます。 極端な例を挙げると、 ・最高の食事 × 最高の環境 × (飼い主が)不安だらけ ・ひどい食事 × 最高の環境 × (飼い主が)最高の精神状態 のようなケースでは、 一部でどんなに頑張っても思うような結果は得られにくい訳ですね。 しかも、最高の食事ですとか、最高の環境ですとか、最高の精神状態ですとか、 そんなものはこの世に存在しません。 ですから、そんなに難しく考えず、 愛犬にとって快適かつ健康的な暮らしを「意識する」ところからスタートしては? と僕からはオススメさせて頂きます。 以上、非公式な伊藤の見解でした。 例によって解釈は人それぞれです。よろしかったら参考になさって下さい。
●ご質問
うちは、シーズが4頭いるのですが(11歳が2頭、8歳、2歳) 11歳の1頭が1年半ぐらい前に心臓病と診断されました。 最初は、咳がひどかったのですが、友人に手作り御飯の話を聞き、手作り御飯に変えたら、 咳が収まってきました。 小型犬は、心臓病になりやすいと聞きましたが、今のところ1頭だけです。 でも、他の子もそのうちなってしまうんではないかと心配です。 予防法、アドバイス宜しくお願いします。 ●回答 ご質問ありがとうございます。 まず、生まれつきの心臓の奇形を含めると話が広がり過ぎますし、 フィラリア症は予防薬で予防出来ますから、それらは省きます。 ですから、犬の心臓病のほとんどを占める僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)や、 心筋症などのポピュラーな心臓病についてのお話しという事で進めます。 これらの心臓病を予防するにはどうしたらいいか? 答えは、「現在のところ不明」です。 なぜなら、病気の原因が分かっていないからです。 原因が分からないので、対策の打ちようがありません。 ですから予防も難しいですし、 治療も原因を取り除くのではなく、心臓の負担を減らして悪化を遅らせるという方針になります。 これが、公式見解です。 「えーーーー?!」という不安の声が聞こえてきそうです。 そのため、次回は公式でない見解もお伝えしたいと思います。 続きます。
・心臓病の早期診断には検査が大事!
・特に超音波検査(エコー)は有効! というお話しをしてきました。 確かに、ここ10〜20年の超音波装置の性能のパワーアップはめざましく、 「心臓病をしっかり診断するなら超音波検査は必須」 と言っても言い過ぎではないくらいのところにまで来ました。 「出来るだけ早期に心臓病を見つけたい」 と思われるのであれば、おすすめです。 ただし、以下の点は獣医師・動物看護士でないと分かりづらいところです。 知っていると知らないでは差が出ますので、お伝えしておきます。 ■超音波検査の装置の性能はピンキリ 心臓をしっかり診たいのであれば、 「カラードップラー」という機能が付いている装置がどうか? が極めて重要です。 カラードップラーとは、簡単に言うと、血液の流れが色で見える機能です。 これで血液の逆流などをチェックします。 これがあった方が当然、良いです。 さらに言うと、カラードップラー機能が付いている機種の中でも性能の差が激しいです。 僕は仕事柄、いくつかの超音波装置を使っていますので分かるのですが、 やっぱり高い機械はいいです。 見え方が全然違います。 ただし、機械の性能が上がるにつれて、お値段も跳ね上がっていきます。 どんな病院でも簡単に買えるものではありません。 同じ超音波検査でも、値段が違う背景にはこういう事情もあります。 ■超音波検査には技術が必要 あまり一般に知られていない事かもしれませんが、 獣医師は大学を出た時点では、なかなか診察が出来ません。 かなりの量の知識は詰め込んで卒業してくるのですが、 それでも現場レベルでは通用しません。 現場で鍛えられながら、成長してくるんですね。 超音波検査も同様です。 獣医さんだからやれるという訳ではありません。 ですから、立派な装置はあるけれど、検査出来る人がいない…というような病院もあります。 一応検査をしているけど、おそるおそる…という病院も知っています。 でも、これは仕方が無い部分もあります。 ふつう、獣医さんは全ての病気を診なければなりません。 やらなければいけない範囲が膨大過ぎて、超音波検査だけには時間が割けません。 僕は心臓が専門ですから、超音波検査は日常的にやっていますが、 逆にほとんどの獣医さんがこなせる事はまるで出来なかったりします。 僕も何年かは町の獣医さんとして働いていましたので分かりますが、 全ての分野をやるのは極めて大変です。 ほとんどの先生方は町の獣医さんとして、全ての分野を頑張られています。 それは物凄い事ですし、本当に頭が下がります。 ■超音波検査だけで全てをカバーできる訳ではない 超音波検査も万能ではありません。 他の検査と組み合わせる事によって力を発揮しますし、 場合によっては他の検査を優先させた方が良い場合も多々あります。 心臓病の早期診断という事に限る、のであればかなり有効ですが…。 という感じです。 まとめますと、「心臓病を早期発見する」のが目的であれば、 ・定期検査が一番有効 ・中でも超音波検査はオススメ ・ただし、超音波検査の質も大事です となります。 ご参考になりましたでしょうか? 何かご不明な点があればご質問下さいね。
●ご質問
はじめまして。 初めてカキコミさせていただきます。 現在Mダックスと生活しています。 小さい頃、目の手術(チェリーアイ)をしましたが、以後問題なく生活していますが、「心臓病」の早期発見はやはり定期的な健康診断しかありませんか? しぐさや予兆などあるようでしたらご教授ください。 また心臓病に掛かりやすい年齢なども教えていただけると幸いです。 ●回答 ご質問ありがとうございます。 心臓病の早期発見に関してですが、基本的にはやはり検査が一番です。 なぜなら、 多くの心臓病は初期にほとんど症状が無いから です。 例として、犬に一番発生が多い僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)でお話します。 僧帽弁閉鎖不全症は、 僧帽弁がどんどん元の状態から変化してしまい、 ↓ 変化した結果、きちんと働けなくなって、 ↓ 本来一方通行のはずの血液が逆流してしまう という病気です。 この病気の進行していく過程を追いつつ考えてみると、 ■僧帽弁閉鎖不全症で、一番最初に分かる事は何か? それは僧帽弁の変化です。 これは正直、超音波検査でないと分かりません。 ↓ ■僧帽弁の変化が進むと、そのうち血液の逆流が起こり始めます。 この逆流を初期から捉えるのに一番有効なのは、またも超音波検査です。 血液の逆流があれば聴診によって雑音が分かる場合もありますが、 初期の小さな逆流では、まだ音も小さく、聞こえにくい場合も多いです。 (でも経験豊富な先生の場合、この聴診の感度が高かったりします) ↓ ■その後、血液の逆流が多くなってくると色々な事が起こってきます。 雑音が大きくなるので聴診でも良く分かりますし、 心臓が大きくなるので心電図やレントゲン検査でも異常が見つかりますし、 もちろん超音波検査でも血液の逆流が良く分かります。 程度によっては、咳などの症状も出始めます。 自宅で見ていて気がつくのは、大抵このレベルになってからです。 といった感じになります。 「なんだ、結局、超音波検査が一番か」 と思われるかもしれません。 確かに超音波検査はとても有効なのですが、注意点があります。 それは、 ・超音波検査の装置の性能はピンキリ ・超音波検査には技術が必要 ・超音波検査だけで全てをカバーできる訳ではない という点です。 続きます。
■前回までのあらすじ■
心臓が病気になった! ↓ 心臓の効率が落ちる ↓ いつもより頑張って血液を送り出す量を維持! ↓ 無理がたたる事により、心臓自体は弱っていく… ↓ 心不全(しんふぜん) と言う訳で、心臓が悪くなっていく過程においては、 心臓の頑張りがむしろ悪影響 という一面があります。 そのため、ほとんどの心臓病の治療においては、 いかに心臓に頑張らせないか がテーマであると言っても過言ではありません。 その、 いかに心臓を頑張らせないかという戦略の一つに、「安静」がある訳ですね。 だ・か・ら、安静は大事なのです。 心臓病の時にもらうお薬の多くも、心臓に頑張らせないようにするお薬です。 放っておいたら勝手に頑張る心臓に対して、 「まあ、そんなに頑張らずに気楽に行こうよ」 とブレーキをかけるイメージです。 ですから、安静にするというのは天然の心臓病のお薬とも言えますし、 心臓病のお薬は、ついつい興奮しちゃう子でも心臓を休めてあげられる方法だとも言えます。 僕は現在心臓病を専門としていますが、いいなと思うところは他の分野に比べて 比較的身体に優しい薬が多いという点です。 例えばきっと皆さんがもらっている、 ACE阻害薬(例 エナカルド、フォルテコール、バソトップ、エースワーカーetc) というお薬でしたら、間違って10倍の量を飲ませてしまってもほぼ平気です。 心臓って聞いただけで「うわあ恐ろしい!」みたいな反応を示す人は少なくないですが、 治療は結構マイルドにやっていたりします。 それでは、安静の大事さをお伝えしたところで、 次回からは具体的にどうやって安静にさせるのか?に進みます。 |